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脳神経内科のかかりかた

 頭痛、しびれ、脱力などは、脳神経の不調からくる症状と考えられています。頭痛やめまいでは脳外科、手足の脱力やしびれなどの場合は整形外科に行くことを考えますが、実際は手術をせず、薬で治療する場合が少なくありません。脳神経を内科的に治療する科としては、脳神経内科、心療内科が思いつきますが、精神科がより専門的な治療をする場合もあり、実際、どこへ受診したら良いか、迷うことが少なくありません。

 目安として、精神的なストレスがかかると悪化し、気分がおちこんで動けない、眠れない、考えられない、身の周囲の音が、人の声に聞こえるなどの症状があるときは精神科へ、同じくストレスによって、頭痛、しびれ、脱力のほかに、めまい、腹痛、動悸、呼吸困難などの症状が加わる場合は、心療内科へ、ストレスによっても頭痛、しびれ、脱力があまり変わらない場合は、脳神経内科への受診が良いでしょう。

 脳神経内科が専門的に治療している病気には、頭痛や筋ジストロフィー、けいれんの他に、手足がふるえ、上手に歩けなくなるパーキンソン病や、筋肉がやせて、徐々に全身の力が入らなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病があります。

 脳神経内科を受診した方が良い症状には、頭痛の他、徐々に手足に力が入らなくなり、字が書けない、着替えができない、上手に歩けない、転んでしまう、呂律が回らない、よだれがこぼれる、ムセて飲み込めない等ですが、まずは、どの科を受診すべきか、迷う場合はかかりつけの先生に相談されるか、受診前に病院へ問い合わせるとよいでしょう。その際には、いつ頃から、どんな症状がでて、どこに受診して、いまどうなっているなどのメモが役立ちます。問い合わせる時だけでなく、受診の時も用意しておきましょう。

脳神経内科 會田 隆志

もうちょっと、詳しい説明です。

 神経内科で治療する頭痛ですが、大きく分けて片頭痛、緊張頭痛、群発頭痛の3タイプがあります。片頭痛は、心臓の拍動とともにズッキン、ズッキンもしくは、ドクドク、ガンガンと表現される痛みです。数時間から2日間ほど続くことが多く、頭痛が始まるときに光が見えたり、吐き気が続いたりすることがあります。動くと痛みがひどくなるため仕事や、学校、日常生活に支障をきたします。睡眠不足や飲酒がきっかけになったり、女性では月経周期との関係がみられたりします。

 緊張頭痛は、拍動とは関係なく痛みます。後頭部が重く感じられる程度の痛みもあれば、こめかみから孫悟空の輪のように、頭全体がしめ付けられ、くびの周りの痛み、肩こりを伴うものまであり、季節の変わり目や、姿勢によってひどくなるものまで様々です。比較的長い期間続くことが多いのですが、片頭痛ほど痛くないので、生活に支障はありませんが、ストレスの原因になったりします。しかしこの二つが合併すると、混合頭痛という状態となり、年中軽い頭痛があり、たまに動けなくなるほどの痛みがして寝込むようになります。

 群発頭痛は非常に珍しい頭痛で、頭痛がある時期とない時期を繰り返します。数ヶ月から数年までの間隔で頭痛の時期を繰り返し、目の充血、涙や、鼻水を伴う激しい頭痛があります。期間は1か月から数ヶ月間続き、期間中は1時間程度の頭痛発作がおこり、痛みのあまり食事はおろか、トイレにもいけないような状態となります。そのほか、軽い頭痛でも頭痛薬を連用するためにおこる、薬物乱用頭痛という頭痛もあります。いずれも繰り返すのが特徴で、専門的治療によって症状が軽くなりますので、脳神経内科を受診するとよいでしょう。

 頭痛の中でも特別に急を要するものがくも膜下出血という、脳血管のこぶが破れて出血が脳表面全体に広がる病気があります。経験したことのない頭痛がおこり、吐き気を伴い、数分で意識を失うことも珍しくありません。三割の人しか社会復帰できないといわれる怖い病気です。前兆としては片目だけまぶたが下がる、ものがダブって見えるなどがあります。まれに、前触れの「少しだけ出血」というのもありますので、突然いままで感じたことのない頭痛があれば、血管のこぶの手術が必要になることが多いので、脳外科へ相談されるとよいでしょう。

 意外に思われるでしょうが、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の発病時には、頭痛がないことのほうが多いのです。現在当院では脳卒中の治療は行っておりませんが、これらの症状についても説明いたします。特徴はある日のある時から意識がはっきりしない。ボーっとしている。会話がかみ合わない。右半身もしくは左半身に力が入らず、手が上がらない、物を持ちあげられない、上手に歩けない、転んでしまう、呂律が回らない、よだれがこぼれる、ムセて飲み込めないなどの症状が急速に悪化していきます。脳の血管に血液の小さな塊が詰まって血液が流れなくなる脳梗塞や、血管が破れて血液が周囲にあふれ出す脳出血などが考えられます。手足、のど、口をうごかしている脳の部分に十分な量の血液が届かないためにいろんな症状が起こります。血液が届かなくなった部分の脳から、心臓に対して「急に血液が来なくなったので、もっと血液を送れ」と命令が伝わりますと、心臓が血液を送り出そうとして強く働き血圧が上がるのも特徴です。驚くほど血圧が高いままで、症状が始まって1時間以内に良くなる兆しがなければ、脳卒中が疑われます。どんどん悪くなる場合は1時間を待たずに、救急車を呼んだほうがよいと思われます。
 また、一過性脳虚血発作というものもあります。脳卒中の症状を24時間以内に何度も繰り返す場合は脳梗塞が迫っており非常に危険な状態ですが、治療によって脳梗塞になるのを防げる可能性があります。糖尿病や高血圧を持っている方に多い傾向がありますので、かかりつけの先生に急いで相談してください。

 神経難病には、パーキンソン病、ALS、筋無力症、多発筋炎などがあります。手足に力が入らない、上手に歩けず、転んでしまう。発音がおかしい、食事中にムセるなど脳卒中と同じような症状がみられます。しかし脳卒中との違いは、週単位、月単位でゆっくりと症状が確実に進行し続けること、症状が初期には片半身でも、だんだんと全身に見られることなどです。歩くのや、食べるのが多少遅くなっても生活に支障を来すようにならないと受診せず、またレントゲンや血液検査でも異常がないことが多いため、診断が遅くなりがちです。実際、転んで骨折をして整形外科から紹介されたり、ムセて肺炎を繰り返し内科から紹介されたりして初めて脳神経内科を知った患者さんもおられます。

 難病と言われるのは、進行を止めたり、完治させたりする治療法がないためですが、しかし症状を和らげる治療や合併症を予防するリハビリテーションがあります。痛みを伴わない原因不明の脱力や、ムセなどが進行する場合は神経難病の可能性もありますので、主治医の先生に脳神経内科へ受診した方がよいかを相談してみてはいかがでしょうか。

脳神経内科 會田 隆志